映画の中で見つけた終活①
自分らしく年を重ねて、生きて逝く 「幸せなひとりぼっち」2015年スウェーデン映画

最愛の妻に先立たれ、長年勤めた会社もリストラになった59歳の主人公。 昔は地域の自治会長を務めていた彼は曲がったことが大嫌い。妻が亡くなってからは偏屈な頑固親父として孤立し、妻の元に早く旅立ちたいと天井にロープを吊るすも様々なご近所のトラブルに右往左往する日々。 物語の流れとしては、それぞれの事情や気持ちを知り合うことで彼もこの地域で折り合いをつけながら暮らしていくことなるのだが、決して彼は改心したわけではない。 妻の墓石に行ってはご近所のトラブルを愚痴り「明日は必ず君の元へ逝くから」と約束して帰る彼に『今を生きる』ことを気づかせたのは、亡くなった妻の軌跡だった。 事故で車いす生活になった妻は人生を諦めず、特別学校の教師になり問題を抱える子どもたちを見守ってきた。そんな妻の教え子がトラブルを抱え頼ってきたが、拒否する彼に教え子が言ったひと言『先生なら助けてくれると思って…』この言葉をきっかけに、彼は彼の尺度で人との関りを取り戻していく。 頑固でいつも頭ごなしに話す九州男児だった義父が苦手だった私。義母が亡くなった2年後、一人暮らしの自宅で一人で逝ってしまった義父を、自分の価値観でしか生きられない人と決めつけていたのかもしれないと、この映画を観て思った。 人は決して一人で生きてきたのではない。たくさんの人との出会いや環境の中で泣いたり笑ったりしながら価値観が形成されていく。表面だけの価値観で接することは、自分も相手も不幸にしてしまうのかもしれない。「寡黙(かもく)な人」を美化する風潮があるが、高齢者と呼ばれる年齢になると孤立・孤独化する傾向にある日本の社会って、少し不幸かもしれない。 高齢化社会が抱える問題は万国共通であるが、福祉大国スウェーデンで国民の5人に1人が観た大ヒット映画「幸せなひとりぼっち」。日本でもこんな映画が製作されたら、自分らしく年を重ねられると思えるかもしれない。 「幸せなひとりぼっち」 http://hitori-movie.com